最高裁判所第二小法廷 昭和34年(あ)387号 決定 1962年2月09日
主文
本件各上告を棄却する。
理由
弁護人白石基の上告趣意第一点は、事実誤認及び単なる法令違反の主張であって刑訴四〇五条の上告理由に当らない。
(原判決は、本件敷札の記載金額は、入札日の前日、壬生川町長、同町会議長、同教育委員長及び同副議長であった被告人徳永順一の四名において、同教育委員会の決議に基き、これを決定したもので、右全員の同意がなければ、同町長においても変更することができない事情にあったことを認定し居るものであるから、同町長において何時でも右敷札金額を変更しえたものであることを前提とする所論は採用し難い。しかして、被告人徳永順一は自己も参加して決定した右敷札金額を被告人黒河喜志男等と共謀の上入札予定者宮川和助のみに内通してこれを基にして入札をさせたものであるから、原判決が被告人等の所為をもって刑法九六条の三にいう「偽計を用い公の入札の公正を害すべき行為を為した者」に該当するとしたのは正当である。)
同第二点は、単なる法令違反の主張であって、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。(原判決の認定した処によれば、本件入札は単に価格のつり下げのみを目的とせず工事の適正を期して行われ、敷札金額に最も近接する価格で入札した者を落札者となすこととし、かつ入札実施者に於て各入札者に対してこの点についての説明をした上で入札を施行したことも明らかである。)
同第三点は、事実誤認及び単なる法令違反の主張であって、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。
記録を調査しても、所論の如く本件石炭の保管委託が消費寄託の趣旨であったこと、被告人徳永順一の売却行為が壬生川町のための管理行為であったことを肯認しうる証拠はない。
また本件につき刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。
よって同四一四条、三八六条一項三号により裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 藤田八郎 裁判官 池田克 裁判官 河村大助 裁判官 奥野健一 裁判官 山田作之助)